Dadh Baronr: アーヴ語の通時的研究: 音変化の法則

一般的素描

アーヴ語はヤマト語族トヨアシハラ語派に属する(ピア:1999-1)。トヨアシハラ語は人類が宇宙開発に進出しだした時代、当時のニッポン語(以下日本語と略記)から外来要素を排除し、外来要素の少なかったいわゆる上代日本語(西暦八世紀まで)から再構成を行ったものである。

アーヴ語はトヨアシハラ語から発展したものであり、このためアーヴ語学においては、しばしばトヨアシハラ語は古アーヴ語と呼ばれる。

古アーヴ語は日本語と同様、単子音 + 単母音による音節構造を基本とし、かつ /N/ 以外の子音が音節末に来ることができないという性格をもつ。現代アーヴ語の音節構造はこれと非常に異なるものの、しかしその音組織は、他の言語の影響をほとんど受けることなく古アーヴ語の音組織から変化してきたと推測される。

この変化過程において、古アーヴ語および日本語の特徴であった文法的機能をあらわす非独立詞が、アーヴ語においては、あるものは語要素として他の語と融合し、あるものは後置詞や動詞接尾辞として意識されるようになった。けっかアーヴ語は音韻面だけではなく文法的にも大きく変化した。なお、これらの変化は数世代のうちに完了したものと推測される(森岡:1996-3,263)。

本サイトでは仮に、これらの変化を総括して「大変化」と呼び、大変化中のアーヴ語を現代アーヴ語や古アーヴ語に対して、中古アーヴ語と呼ぶことにする。残念ながら中古アーヴ語の言語資料は皆無であり、その音組織および文法組織は推測の域を出ない。

本稿では「大変化」のうち、古アーヴ語から現代アーヴ語への主要な音変化を紹介する。ただし下記の法則化はいまだ暫定的であり、今後の研究によって変更される可能性をもつ。

母音の変化

古アーヴ語から現代アーヴ語への母音変化には単純な推移だけではなく、広範な母音変異が認められる。母音変異とは、ある語において強勢のある音節の母音が、強勢のない次の音節の母音の影響を受けて、それに近い性質の母音に変わる現象をいう。アーヴ語においては、しばしば母音変異は影響を与える母音の脱落を伴う。森岡は母音脱落の後、残存母音が脱落母音と融合したことを指摘する(ibid.)。この母音変異により、アーヴ語はその特徴である極めて充実した母音組織を獲得した。これにたいし、語源の類推等によって推測される古アーヴ語の母音組織は、たかだか a i u e o の五母音を有するものとみられる。

以下、古アーヴ語を OB、中古アーヴ語を MB、現代アーヴ語をたんに ModB と略記する。

OB の e 音は ModB の e 音より ModB の é 音に近い音価を持つ。本稿では OB の e 音を ModB の e 音と区別するため、読者の便宜を図って é と表記する。母音の消失を特に示す場合には 0 の表記を用いる。また母音の変化は母音間に子音があるときとないときでほとんど差がないため、本稿では特に必要なときを除き、母音間に子音が置かれるかどうかを明記しない。

  1. アクセントのない音節では、ときに OB 任意の母音 → ModB e。なおこの変化は MB の期間全体にわたって進行したと考えられる。
  2. 一般に、ある母音の OB における前後の母音が MB で保存されたとき、この母音は下記のように推移する。
  3. 後続母音が脱落または e に弱化するとき、脱落母音と残存母音の音価が同じならば、残存母音は上記と同様の方式で推移する。この現象を仮に縮約と呼ぶ。
  4. OB における a の後続母音が MB で脱落するとき、一般に OB a + i または éé + i → ModB ai、OB a + u または o → ModB au

    ただし OB ai(ModB の ai と異なり a + i の母音連続)のとき、しばしば OB ai

  5. OBにおける後続母音 a が MB で脱落するとき、一般に OB i または é + a → ModB é、OB u または o + a → ModB o。ただしまれにそれぞれ → ModB aiおよびau
  6. OBにおける後続母音 i または é が MB で脱落するとき、一般に

    両母音の先後関係が逆のときも、i の脱落が生じたときには残存母音は同様の方式で変異する。

  7. OBにおける後続母音 u または o が MB で脱落するとき、一般に OB i または é + u → ModB eu

    両母音の先後関係が逆のときも、u または o の脱落が生じたときには残存母音は同様の方式で変異する。

  8. 他の母音とのあいだに子音を有する場合に限り、MB および Mod B の母音 e は母音変異にかんしては脱落したのと同様に考えられうる。したがってときに OB u + 子音 + i または é → ModB e + 子音 + eu
  9. これらの変異規則にもかかわらず、残存母音は、すでに縮約されているとき、母音変異を被らない。OB orochi → Early MB *roch(i) nga → ModB nochec など。
  10. OB の語尾母音は ModB において多く脱落する。

母音の子音化

OB におけるいくつかの母音および母音連続は、ModB においては半母音ないし子音を含む音節へと発展する。

  1. 母音が連続するとき、しばしば i および u の半母音化が起こる。a を例にとると、OB ia → ModB ïa[ja]、OB ua → ModB üa[wa]。OB で他の母音が後続するときも同様。
  2. OB で語頭に母音がたつとき、後続音節 CV は ModB ではしばしば入れかわり、VC となる。このとき語頭母音が i o u であれば、語頭母音は半母音化する。例 OB imo → ModB ïomh、OB ito → ModB ïoth
  3. OB → ModB ghé
  4. OB yo[jo](OB の y は ModB の /Ï/) → まれに ModB é(ü?)。
  5. OB u → 語頭でしばしば ModB ü さらに 変化して f.後者は Late MB までにすでに ü の音価をもっていたものと推定される。
  6. OB → ModB fa または
  7. OB 長音o → ModB bho
  8. OB および MB で o が o 以外の母音に後続されるとき、しばしば ModB ü

子音の変化

一般に、後続母音を伴う子音は変化し、後続母音が脱落した子音は保存される。ただし OB の格助詞の先頭子音は、後続母音が脱落するにもかかわらず、ModB において母音を伴うときと同様の変化を示す。

  1. 一般に OB での後続母音を MB で保つ子音は ModB においては下記のように変化する。
  2. 一般に OB での後続母音が MB で脱落した子音は OB の音価を保持する。さもなければその子音は OB から ModB への変化とは逆方向に変化する。したがって OB での語尾子音は高い確率で ModB において保存される。
  3. ただし後続母音を伴いながら変化しない子音、また後続母音を欠きながら母音が伴うときと同じ方式で変化する子音も認められる。
  4. OB 子音1 + 母音 + 子音2 → MB 子音X + 0 + h において、子音Xが非摩擦音である場合には、この子音は h と結合し摩擦音化する。したがって MB g, k, r, n, d, t, m, b + h → ModB gh, ch, rh, nh, dh, th, f, bh. この現象は OB の名詞 + 格助詞「が」の融合形である、ModB の名詞主格語末音に大規模に認められる。
  5. OB の鼻音化子音 ng は OB の音素 /N/ および /G/ に共有されるが、このうち /G/ に属するものは 初期 MB において非鼻音化し gとなった。このため OB /G/:ng → Early MB g となり、ModB におけるその音価は OB g と同じ方式で変化する(h,g,ï)。 いっぽう OB /N/:ng は OB n と同一視され、OB /N/:ng → Early MB n となった。
  6. OB の語末の /N/ はその実際の音価にかかわらず → ModB n
  7. OB t + 母音1 + 子音C + 母音2 → ModB s + 0 + 子音c + 母音2'。母音2' は、母音 1 の母音 2 への融合あるいは縮約であり、子音 C は後続母音を取る場合の遷移方式に従う。
  8. ただし上述の場合に、OB で 子音C が k であるときのみ、→ Mod sc。母音の融合・縮約については上述の規則に従う。
  9. ときに OB s → ModB t。なおいかなる条件のもとでかはいまだ不明である。
  10. OB の歯茎破擦音 ch(資料により ts とも表記)が、最終音節にあって i と結びつくとき、しばしば → ModB ch

このペイジの冒頭に戻る


本ドキュメントは森岡浩之著『星界の紋章』『星界の戦旗』および関連著作物に基づいてアーヴ語を再構成したものです。

このペイジ中のアーヴ語についての情報は、すでに作者森岡氏によって公にされた一部のものを除き、編者 Sidryac Borgh=Racair Mauch の独断と偏見によるものであり、森岡浩之氏の一切関知するところではありません。御留意ください。

Most recent update: 10/11/2001
First publification: 3/21/2001
Copyright and contact information is available.
URL: http://dadh-baronr.s5.xrea.com/diachronic/changes.html