アーヴ語学特殊講義A: アーヴ語の語順第三回

アーヴ語の語の機能は格変化によって明示される。このため一部の言語と異なり、語順に語の文法的機能を示す必要性は求められていない。しかしながら、云い易さや慣習、また意味の明瞭化のために、アーヴ語の語順にも一定の傾向性が認められる。本講義ではアーヴ語の談話における慣用的な語順をテキストに則して検討する。

今回は名詞句における語順および単純文における語順について考察を加える。

名詞句における語順

名詞同士の語順

  1. 一般に、名詞生格が他の名詞を限定修飾するときには、限定される語の後に生格がおかれる。

    ... Dreuhyni Gochtaür. (文16)

    ... déc rinor. (文37-4)

  2. ただし第一型活用に属する名詞の生格は、限定される語の前におかれる。

    Bar Frybarec ...

    Gar Scass ...

  3. 生格以外の名詞が並べられるとき、その語順は自由である。
  4. 三つ以上の名詞が並べられるとき、その名詞句のなかで意味的に重要なものが句の最初と最後に現れる傾向を示す。

    Frybarec gloer gor Bari.

名詞と他の品詞の語順

  1. 代名詞の生格はつねに限定する語の前におかれる。
  2. Farar saiméïri sosr. (文49)

    Far murrautegh ... (文37-4)

    ... dar saurh. (文63)

    ... sor méni. (文64)

  3. 一般に、形容詞が名詞を限定修飾するときには、限定される名詞の後に形容詞がおかれる。

    ... Nahainelacé bhoca.(文22)

    ... frymec casna. (文66-2)

  4. 分詞または分詞句が名詞を限定修飾するときには、形容詞に準じた位置を取る。

    ... rirragr rinïaara. (文75-2)

    ... nahainec cnérura nisel. (文38-2)

複数の句からなる名詞句中の語順

  1. 名詞句が他の名詞句を限定修飾するときには、それぞれの名詞句の中の語順が保存される。

    ... daci gorraicr farer ménr. (文7-2)

  2. 機能上同等な複数の修飾句がひとつの名詞(句)にかかる場合には、短いものが長いものより前におかれる傾向を示す。したがって語は句の前におかれる。ただし文例が少ないため確言はできない。

    ... agtle lisa Faicer Crybr. (文29-1)

    ... seloemecotle sézaca buca Nahainer Sactacr ... (文51-2)

単純文における語順

つづいて単純文における語順を検討する。単純文の語順は複合文や重文の語順を考える上での基礎となるため重要である。

不変化詞の位置

  1. 感動詞は文頭におかれる。

    Ghé, fe gaimecice.(文9)

    ただし感動詞が連続する場合はこの限りではない。

    A, , fe cluge.(文2)

  2. 接続詞は、文と文を接続するときには、いっぱんに文頭におかれる。

    Séd farh tosée scare sanslymi murrauter.(文57-2)

    Goï f'a usere.(文62)

    ただし接続詞を文末におくこともできる。また節同士を接続するときには、接続詞は連結される節の間におかれる。

    Bottm f'alocle catrarél daci üicreurer rozaice séd.

    これを文全体を限定する後置詞の一種と見ることも可能である。
  3. 文全体を限定する副詞および副詞句は文頭または文末にできる限り近くおかれる。

    Gumrari cnac dore sor méni. (文64-1)

    Enhotle scarr obi. (文55)

  4. 語または句を限定する後置詞は限定される語または句の直後におかれる。

    ... f'a usere. (文62-2)

    Far ïomh razaimena lo frymelach a ...

  5. 文全体を限定する後置詞は文末におかれる。

    Cluge sa? (文1)

    Loraigee saiméïc gaisr sacr sa?(文56)

  6. 疑問副詞・疑問代名詞はできるだけ文頭におかれる。

    Daize de fasarle? (文6-2)

    Zaireri de ïarbarle sa? (文47)

主題部の位置

  1. 主題部をもつ文においては、主題部は述部より前、かつ可能な限り文頭近くにおかれる傾向をもつ。

    F'a usere Dreuhyni gochtaür.(文16)

    Daizedar f'a ane lyreni.(文4-2)

  2. さもなければ主題部は文末におかれる。この場合主題部は文において叙述される動作の主体と同一でないことが多い。繁雑を避けるため、文における動作の主体を以下の記述では文主体と呼ぶ。

    Inhoth ane caisromi a?(文21)

  3. 文主体もまたできるかぎり文頭近くにおかれる。主題部と文主体が別の場合、主題部は文頭近くにおかれ文主体がそれに続くか、さもなければ文主体が文頭におかれ主題部が文末におかれる。

    Dacé gactr a, fe launerimuradle piccage.(文64-4)

述部の位置

  1. 述部は他の要素が許すかぎり文頭に近く、かつ主題部および文主体より後に位置する傾向を持つ。

    F'a usere Dreuhyni Gochtaür.(文16-2)

    Ghé, fe rumlér sor méné.(文31)

  2. 述部をとくに強調するために通常の優先順位を無視して文頭におくことができる。

    Um, facrade fe gapi.

    Loraigee saiméïc gaisr sacr sa? (文56)

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本ドキュメントは森岡浩之著『星界の紋章』『星界の戦旗』および関連著作物に基づいてアーヴ語を再構成したものです。

このペイジ中のアーヴ語についての情報は、すでに作者森岡氏によって公にされた一部のものを除き、編者 Sidrÿac Borgh=Racair Mauch の独断と偏見によるものであり、森岡浩之氏の一切関知するところではありません。御留意ください。

Most recent update: 4/03/2002
First publification: 5/11/2001
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