アーヴ語学特殊講義A: アーヴ語の語順第四回

今回は二つ以上の動詞を用いる文を取りあつかう。はじめに重文について考察を加え、つぎに複合文に入る。

重文における語順

  1. 重文とは、等位接続詞によって二つ以上の節を連結した文である。

    R'a éni ane, séd éni anade ...(文11)

  2. ひとつの重文を、文 + 等位接続詞 + 別の文…へと分解することもできる。このとき、重文を構成するおのおのの節は、単独では単純文または複合文としてみることができる。したがって各節における単語の順は、単純文または複合文における語順の規則にしたがう。
  3. 重文の中で各節が登場する順序は、文法的な規定によってではなく、話題の性質によって定められる。

複合文における語順

  1. 複合文とは、文のうちにひとつ以上の従属節を含む文である。

    ... f'a snaie sote bina cilor. (文13-2)

    Laimi lanota daci Frybarer, saiméïc sosr a simelér sote üaucra sace ... (文51-1)

  2. 従属節は分詞形動詞を含む節であり、文法的機能に応じて三つに分類される。
    1. 名詞節
    2. 形容詞節
    3. 副詞節
  3. 名詞節は、単純文における主語・目的語・補語のいずれにもなりうる。名詞節は、通常、事柄を意味する名詞 soth と分詞形動詞の組み合わせからなり、soth の格変化によって、節が文中でとるべき文法的機能を表現する。

    主語が名詞節である例: Soth solaïa ïarbhoti a loer fari ane seloemecotle ... (文51-2)

    目的語が名詞節である例: De samade sote loma far sori sa? (文3)

    補語が名詞節である例: R'a sotle botnasa dari éïrace lona. (帝国国歌第九行)

  4. 接続詞的役割をはたす soth を除くと、soth に導かれる節における語順は、単純文における語順にほぼ等しい。soth の直後に分詞形動詞が置かれ、その後に分詞形動詞の目的語およびその他の単語がおかれる。soth はその格形にかかわりなく、たいてい節の冒頭に置かれる。
  5. 名詞節自体の文中での位置は、その文法的機能に応じて決定される。すなわち主語となるときは文頭に近く、目的語となるときは動詞の後に置かれる傾向を示す。
  6. 形容詞節は、形容詞と同じく、名詞または代名詞を限定修飾する。

    Disfach a losorle caira sor ménr ... (文76)

    R'a nisele zasa saréül ïati üésa ... (文34)

  7. 分詞形不定詞と形容詞語尾が -a と同形であることから窺われるとおり、この用法は分詞本来の機能にもっとも近い。論者によっては、前項の名詞節も、soth が分詞によって形容されているものとし、分詞の形容詞的用法に分類するものもある。
  8. 限定用法の形容詞が名詞の直後におかれるのと同様、形容詞節においても修飾語である分詞が節の冒頭、すなわち非修飾語の直後におかれる。分詞節内での語順は単純文における語順にほぼ等しい。

    ... seloemecotle sézaca ...(文51-2)


    ... daci rirragr rinïaara Loebehyné Disfacr. (文75-3)

  9. 副詞節は、動詞あるいは文全体を修飾する。

    Laimi lanota daci Frybarer, saiméïc sosr a simelér sote üaucra sace ... (文51-1)

  10. 副詞節は先行詞として laimi (〜のために) baide (〜まで)などの名詞を必要とする分詞節のほか、動詞語幹に直接副詞化語尾 -i を付加して形成された副詞化分詞によっても形成される。

    ... cadasure barone locadi catoral. (文40)

  11. ただし論者によっては前者を形容詞節の一種、後者をたんなる動詞由来の副詞とし、副詞節を認めないものもある。
  12. 副詞節における語順は、先行詞を取るものは名詞節と同様であり、副詞化分詞によるものは、形容詞節と同様である。
  13. 副詞節の位置は、単純文における副詞と同様、比較的自由である。

おわりに

以上、簡単ではあるが、四回にわたってアーヴ語の会話文における語順を考察した。これはあくまでも会話文における語順であり、詩語においてはより多様な語順が見られることは最初に示唆した通りである。しかしいたづらに奇をてらい複雑な表現を競うより、自然でかつ正確な表現を目指すことこそ、かえってアーヴ語の運用能力を高める早道である。受講生諸君が、これからも多くのアーヴ語文に触れ、アーヴ語の自然な表現を身につけていくことを希望する。

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本ドキュメントは森岡浩之著『星界の紋章』『星界の戦旗』および関連著作物に基づいてアーヴ語を再構成したものです。

このペイジ中のアーヴ語についての情報は、すでに作者森岡氏によって公にされた一部のものを除き、編者 Sidrÿac Borgh=Racair Mauch の独断と偏見によるものであり、森岡浩之氏の一切関知するところではありません。御留意ください。

Most recent update: 4/03/2002
First publification: 5/23/2001
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