アーヴ語学特殊講義A: アーヴ語の語順第二回
前回に引きつづき、文法概念の検討を行う。
アーヴ語の文
アーヴ語文の下位構成要素
- 単独の語あるいは連結されたいくつかの語は、文を構成する意味単位となることができる。
- 句は、語の連結された意味単位であり、ただし述部をもたないものである。
- 節とは、語の連結された意味単位であり、それ自体の述部をもつものである。
D'a saucele. (文32)
Far murrautegh a déc rinor ane ïati laci. (文37-4)
- 文は、ひとつ以上の節によって構成され、主題部および述部の二つの部分からなる。文はある完結した意味内容を伝える文法上もっとも大きな意味単位である。
- 主題部と述部は、それぞれ語、句、または節によって構成される。
- 主題部と述部の他に、文には、複数の節を連結するための語や、文の構成に直接影響を持たない意味を限定するための語句が含まれることがある。
- 節は、単独で文を構成するだけでなく、他の語句を限定的に修飾し、あるいは他の節と並置されて、文を構成する下位要素ともなる。
- 文脈上明らかなとき、主題部は省略可能である。
- アーヴ語文はその構造により、単純文、複合文、重文に分類される。
- 述部とときに主題部をもつひとつの節のみからなる文を、単純文と呼ぶ。
- 他の節ないし語句の限定修飾を行う節を従属節と呼び、主節とひとつ以上の従属節を含む文を複合文と呼ぶ。
Soth solaïa ïarbhoti a loer fari ane seloemecotle ... (文51-2)
- 節をたんに連結するためには、等位接続詞を用いる。
R'a éni ane, séd eni anade soth dara nasari dacr sucr. (文11)
-
等位接続詞によって二つ以上の節を連結した文を、重文と呼ぶ。
Fe dorle Laicerhyné Saisfarr, séd f'ane zéle Dreuhynr Cneurauter. (文27)
文の構成
主題部
- 主題部は、動作の主体や描写の対象といった、その文の話題の中心を指示する。
- 動作主体の例: Daze d'a dozmle sa? (文46-2)
- 描写対象の例: f'a ane lyreni. (文3-2)
- 主題部は名詞または名詞句と後置詞 a によって示される。
f'a ane lyreni. (文3-2)
Far murrautegh a déc rinor ane ïati laci. (文37)
feri a rihote ane. (文79-2)
- 主題部はおおく文主体と同一である。しかし印欧系諸語における主語と異なり、アーヴ語の主題部はたんに話題の中心を指示するものであり、かならずしも動作主体等であることを要さない。その結果アーヴ語では主格以外の格も主題部に立つことが許される。
Inhoth ane caisromi a? (文21)
- 主題部は文の意味内容の関心の所在を与える。しかし文脈から文の主題が自明であるとき、主題部は省略可能である。いいかえれば、実際のアーヴ語の発話においては、主題部は必須の部分ではない。
Cluge sa? (文1)
Role ane. (文7-1)
述部
- 述部は、主題の存在・非存在、動作、性状や様態の形容など、主題を限定する陳述を行なう。
- 述部の構成の仕方によって、文を存在文・性状文・動作文に分類することができる
- 存在文は、あるものの存在または非存在を話題にし、目的語を取らない動詞 ane からなる述部をもつ。
Inhoth ane caisromi a? (文21)
Sicféc ane sa? (文54-2)
- 性状文は、あるものの性状・属性を話題にし、名詞あるいは形容詞またそれらに準ずる句・節を目的語とする述部をもつ。述部に動詞 ane を含む場合と含まない場合があり、後者のうち名詞または名詞句を述部とするものを特に名詞文ということがある。
- ane を含む例:
R'a éni ane.(文11-1)
f'anade saucele. (文33-1)
- ane を含まない例:
R'a éna.(文20)
D'a saucele. (文32)
Disfach a losorle caira sor ménr.(文76)
- 動作文は、あるものの動作を話題にし、ane 以外の動詞およびその目的語からなる述部をもつ。
fe cluge.(文2)
F'a usere Dreuhyni gochtaür.(文16)
-
どの種類の文においても、存在・性状・動作の主体が文脈上明らかなときは、とくに明示する必要はない。
Role ane. (文7-1)
Userélé? (文30)
いいかえれば、アーヴ語の文において、主体は必須の文要素ではなく、むしろ副詞やその他の修飾句と同様の付加的要素である。この傾向は慣用的表現においてとくに著しい。
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本ドキュメントは森岡浩之著『星界の紋章』『星界の戦旗』および関連著作物に基づいてアーヴ語を再構成したものです。
このペイジ中のアーヴ語についての情報は、すでに作者森岡氏によって公にされた一部のものを除き、編者 Sidrÿac Borgh=Racair Mauch の独断と偏見によるものであり、森岡浩之氏の一切関知するところではありません。御留意ください。
Most recent update: 4/03/2001
First publification: 4/29/2001
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