アーヴ語学特殊講義A: アーヴ語の語順第一回

今回から数回にわたり、語順の問題を考えるにあたって必要と思われる文法概念に、ピア・ハウツィの『アーヴ語の素描』(以下ピアと略記し、頁付を附す)にもとづいてさらなる考察を加える。以下の考察は論者による暫定的なものであり、アーヴ語の規範文法を与えるものではない。また取りあげる文法事項はさしあたり議論に必要なものに限り、網羅的なものではない。

なお本講義における文例は基本的にピアの「ピッカージュを噛む男」から採録し、文例番号を附してその典拠を示す。また一つの文例番号が複数の文を指示する場合、同一文例番号中、何番目の文にあたるかを文例番号とともに示す。

また非文(文法的に可能でない文、または文法的に可能であっても実際の発話に用いられない文)を挙げる際には、文頭に×印を附す。

アーヴ語の単語

語の定義と分類

  1. アーヴ語における文法上および意味論上の最小単位を語あるいは単語と呼ぶ。
  2. 一つの語よりなる文をとくに単語文と呼ぶ。
  3. 語をその機能によって分類したものを、品詞と呼ぶ。
  4. 単語文を作りうる語を独立詞と呼び、他の独立詞と連結してのみ用いられる語を従属詞と呼ぶ。
  5. 独立詞に属する品詞には などがある。独立詞はさらに語尾変化を伴う変化詞と、そうでない不変化詞にわかれる。
  6. 従属詞に属する品詞には などがある。従属詞はみな不変化詞である。

変化詞

  1. 一部の語は語の文中における機能、あるいは意味の様態を表すための語形変化をもつ。これを屈折という。屈折をもつ語を変化詞と呼び、屈折をもたない語を不変化詞と呼ぶ。
  2. 変化詞において、それぞれの変化形に共通すると考えられる語要素を語幹、そうでない部分を屈折語尾と呼ぶ。
  3. 変化詞は名詞・代名詞・動詞の三品詞からなる(ピア:169-8)。他の品詞はすべて不変化詞である。

名詞

  1. 名詞は格による屈折変化をもつ(ピア:169)。格は文中における語の機能を表す。名詞の屈折変化を、格変化とも呼ぶ。
  2. 格によって表すことのできない意味を付加するためには、名詞の前に副詞をおくか、あるいは名詞の後に後置詞をおく。
  3. 一部の前置詞および後置詞は特定の格とのみ結合する。これを格支配と呼ぶ。
  4. アーヴ語の名詞は数および性の区別を持たない。

代名詞

  1. 代名詞は、名詞と同様に格による屈折変化をもつ(ピア:168)。
  2. 代名詞のうち、主として知性体に用いられるものを人称代名詞と呼ぶ(ibid.)。

    fe cluge. (文2)

    Zo dar saurh rure sa? (文63)

    cnac dore sor méni. (文64-2)

  3. アーヴ語の人称代名詞は数と人称の区別を持つ。ただし性の区別をもたない。
  4. 代名詞のうち、非知性体に用いられるものを無生物代名詞と呼ぶ(ibid.)。

    Role ane. (文7-1)

    S'a rugeni socréüni ane.(文10)

    Gumrari ro. (文45)

  5. アーヴ語の無生物代名詞は近称・中称・遠称の三種に分かれる(ibid.)。無生物代名詞は数の区別をもつが、人称と性の区別を持たない。

動詞

  1. 動詞は、法または相、および様態活用の二つの要素に応じた屈折変化をもつ(ref: ピア:168-7)。動詞の屈折変化を、たんに活用とも呼ぶ。
  2. 動詞単独では表現できない様態を表すためには、動詞にさらに動詞接尾辞を結合させる。

    Daizedar fe ïarbarle. (文47)

    farh isurade sote isira saurdani. (文70-2)

  3. 動詞接尾辞は動詞語幹と活用語尾の間に、統語法的に定められた順序に従っておかれる(ピア:167)。
  4. farh isurade(=is-ur-ad-e) sote isira saurdani. (文70-2)

    × farh isadure sote isira saurdani.

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本ドキュメントは森岡浩之著『星界の紋章』『星界の戦旗』および関連著作物に基づいてアーヴ語を再構成したものです。

このペイジ中のアーヴ語についての情報は、すでに作者森岡氏によって公にされた一部のものを除き、編者 Sidrÿac Borgh=Racair Mauch の独断と偏見によるものであり、森岡浩之氏の一切関知するところではありません。御留意ください。

Most recent update: 4/03/2001
First publification: 4/17/2001
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